
時効、と聞くと多くの方がイメージするのは犯罪に関する消滅時効でしょうか。
これになぞらえるような形で、冗談やスラングとして「時効」という言葉を使う方も多いでしょう。
ですが実際のところ、時効はもっと広い場所、例えば「金融機関から借りたお金」等にも適用される場合があります。
今回は一見ちょっと難しい「借金の時効」について、初心者の方でも分かるようまとめました。

この記事は行政書士試験に合格済み&司法書士試験に向けて勉強中の者が書いています!
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目次
1分で分かる!そもそも時効の援用とは?

時効の援用とは、「時効が成立しました!と主張すること」です。
時効には、
- 消滅時効(借金が帳消しになる等)
- 取得時効(他人の土地をゲットする等)
の2種類がありますが、原則として時間が経てば、勝手に適用されるわけではありません。
(※犯罪に関する時効などの例外もあります)
ということで「この借金はもう時効に掛かったので無効です!」と言うためには、原則として「時効の援用」という手続きが必要となります。

「取得時効の条件を満たしたけど、別にこの土地が欲しいわけじゃない」という方もいるでしょうからね…。

ちなみに時効の援用自体は、誰でも簡単に、個人で行えます。
借金が消滅時効にかかる条件・年数
現行の民法(2020年の改正民法)における、借金(債権)が消滅時効にかかる条件は以下の通りです。
以下のどちらかを達成すること
- 債権者(貸し手)が、権利を行使(取り立て等)できると知ったときから5年の経過
- 債権者が権利を行使できるときから10年の経過
もしお金を貸した側が5年間、権利の行使(=催促や取り立て等)をしなかったなら、最短5年で借金は帳消しとなるわけですね。
個人間の貸し借りであれば、以上の条件の達成で借金を帳消しにできることもあるでしょう。
また消費者金融や銀行からお金を借りている方でも、「10年経てば逃げ切れる」とお考えになるかもしれません。

【ネタバレ】残念ながら、そう上手くはいきません
時効が延長したりリセットされたりする場合とは【完成猶予・更新】

結論から言うと、金融機関からの借入を、時効により帳消しとすることはかなり難しいです。
ここからはそう言える根拠である、「消滅時効の成立がジャマされる条件」について解説します。
返済の催告や仮差押え等を行うことで時効は6ヶ月~「完成猶予(停止)」される
以下のいずれかの条件を満たすと、債権に関する時効は「完成猶予」されます。
要するに時効の完成のゴールが、先延ばしになるということですね。
- 催告(お金返してよ!)を行ったとき、6ヶ月間
- 裁判上の支払い督促や請求などが行われたとき、その手続きの完了まで
(取り下げの場合には6ヶ月間) - 強制執行等が行われたとき、その手続きの完了まで
- 協議を行う旨の書面による合意があったとき、以下の中から最も短い期間中
・合意から1年
・その協議の期間中
・協議の続行の拒絶から6ヶ月 - 天災などのやむを得ない事情があるとき、障害の消滅から3ヶ月
※その他未成年者などに関連する完成猶予の条件あり
この条件だけを見ても、金融機関が
- 催告するだけでも6ヶ月間
- 裁判上の対応を行った場合、状況によってはそれより長い期間
時効の成立を妨げることが可能と分かります。
特に催告は低コストで簡単に行えることから、用いられる可能性が高いでしょう。

しかも催告による完成猶予(時効の延長)は、6ヶ月の期間を空ければ何度でも可能です。
一部返済や猶予の申し入れ・裁判などで時効は「更新(リセット)」される
以下の条件を満たすと、時効は更新(リセット)されます。
- 裁判上の判決等
- 強制執行等
- 債務の承認
(=お金を借入中の人が、一部でも借金を返済したり、支払い猶予を申し出たりすること等)
裁判上の判決や強制執行は分かりやすいですね。
もしこの手続きが取られた場合には、金融機関や裁判所から、その旨の通知が届くはずです。

借入額が高額な方ほど裁判沙汰となる可能性は高いとされていますが、このあたりの対応は金融機関にもよるため何とも言えません。
そしてここで注目したいのが、「債務の承認」という項目。
例えばあなたが金融機関に少しでも借金を返済したり、「返済を待ってくれ」と申し出たりすると、その債務(支払い義務)を自分のものと認めたこととなります。
この結果、消滅時効は1からリセット。事項を成立させるには、再び5年または10年の経過を待たねばなりません。
金融機関から「返済なし」「督促・裁判上の手続きなし」で逃げ切ることは困難
ここまでの内容をまとめると、金融機関から借りた借金を時効により消滅させるには、
- 金融機関から借りたお金を、一切返済しない
- その状態で、金融機関から半年ごとに催促を受けたり、裁判上の手続きなどを取られたりしない
という2つの条件を満たす必要があります。
1つ目はさておき、2つ目の条件はかなり厳しいと分かるのではないでしょうか。

まあ、そんなに簡単に逃げられたら商売になりませんからね…。
つまり実際問題として、「何らかの事情で、債務者の追跡が不能になった」などの状況でない限り、時効を理由に金融機関から逃げ切ることは困難です。

ちなみにわたしが行政書士を取ったときは、
・完成猶予は「停止」
・更新は「中断」
と呼ばれていたと思うのですが、いつの間にか名前が変わっていました。
引っ越しをすれば催告が届くこともないのでは?
民法が言うには、意思表示(ここでは催告)が届いたと認識されるのは原則として「その通知が相手方に到達した時」から有効とのこと。
つまり住所変更を相手方に伝えず、金融機関からの通知(催告)が届かなければセーフ!時効は猶予されません!ではあるのですが…。
金融機関などの正当な債権者は、債務者が住所を変更した場合、その住民票を開示する権利を持ちます。
引っ越しに伴う住所変更を金融機関に伝えていない場合でも、催告が「宛先不明」等で戻ってきた場合には、こういった対応が取られる可能性もあるでしょう。
要するに相手方の対処によっては、引っ越し先がバレるということですね。

ちなみに「住民票を変えずに引っ越しする」こと自体は現実として不可能ではないのですが…。
あらゆる公的手続きに不便が生じる上、この場合についても債権者を保護する方法が存在します。
→住民票を変えずに引っ越せば催告などを無効とし、時効成立を狙えますか?
→お金を借りたまま海外に高飛びした場合、時効の成立も容易になるのでは?
時効の援用は難しいけれど借金の返済も厳しい場合にはどうすればいい?

時効の援用は現実問題として難しい、しかし今ある借金を返すのもつらい…。
属性や借入状況によっては「おまとめローン」等の契約も可能ですが、その審査に落ちてしまったという方も珍しくはないでしょう。
こういった状況に至った場合には、司法書士や弁護士に「債務整理」の相談を行うことが有効かもしれません。
債務整理を行うと、その程度によって
- 今後の金利が0%になり、支払いの分だけ借入が減るようになる(任意整理)
- あらゆる財産を失う代わりに、借金が帳消しになる(自己破産)
等の効果を得られる可能性があります。
自分一人での返済が難しい場合にはお近くの専門家の、無料相談サービス等を利用してみると良いでしょう。
債務整理に関する詳細記事は近いうちに作成予定です!
ちょっと待っててね…

債務整理の費用は依頼先によって大きく異なります。
可能であれば、複数の事務所に見積もりを取ってもらいましょう。

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(※はよ専門家のとこ行け!という結論に至る可能性もあります)
個人でも弁護士なしでできます!借金の時効援用のやり方

ここからは消滅時効がすでに成立していることを前提として、借金の時効の援用方法を解説していきます。
内容証明郵便で「時効が完成してます!」という主張(=援用)をしよう
時効の援用などの重要なメッセージの送付には、「内容証明郵便」を利用しましょう。
内容証明郵便とは、相手方に送るメッセージとは別に、
- 差出人
- 郵便局
が一通ずつ、その謄本(複製)を所有する特殊な郵便です。
この方法を使うと、仮に相手方が「書類なんて届いていない」としらばっくれても、郵便局が証人となってくれるわけですね。
内容証明郵便は通常の郵便より480円高い料金が必要ですが、弁護士などに依頼することなく、個人で作成&送付可能です。
参考元・詳細:日本郵政公式サイト

わたしもわたしの原稿をいまだに無断転載しているサイトの運営元に、内容証明郵便を送る機会を狙っています……♪♪
時効の援用方法は実は「口頭」でも良い?
実は民法は、時効の援用の具体的な方法を定めていません。
そのため電話を含む「口頭」で、時効の援用をすることも可能と言えば可能です。
ただし金融機関を相手にする場合、
- コールセンターのオペレーターさんは、時効の援用の申し出などにすぐに対応できない可能性が高い
- 口頭での援用は証拠が残らない
(録音などがあったとしても内容証明郵便に比べると信憑性が低い)
といった事情を考えると、やはり内容証明郵便等を使った援用が推奨されます。
テンプレートは法律事務所のHPなどに掲載されているものを使用してOK
さて、問題となるのは内容証明郵便の内容ですが…。
消滅時効を援用するための書類のテンプレートは、少し検索しただけでも法律事務所(=弁護士事務所)等が公開しまくっています。
良さげなテンプレートを見つけたら、
- ワードソフトで当事者の名前や住所を入力し、印刷
- テンプレートを参考に、手書き
といった方法で「消滅時効援用通知書」(時効の援用のための書類)を作成しましょう。

まあ弁護士事務所のコラムを、弁護士が書いているとは限らないのですが…。
時効の援用自体に弁護士などへの依頼は不要
時効の援用は民法で、一人一人に認められた正当な権利ですので、弁護士などの専門家に頼ることなく実施できます。
弁護士事務所や司法書士事務所が相談や依頼を呼び掛けていることは多々ありますが、そりゃあ仕事なのでとしか言えません。

わたしもアフィリエイト収入を得ているので強くは言えない
借金に関する消滅時効とその援用に関するよくある質問と回答
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ここからは、借金(債権)に関連する消滅時効やその援用に関する質問にお答えしていきます。
借金の消滅時効が完成しているか確かめる方法はありますか?
「契約日時」であれば、契約書、あるいはインターネット会員サービス等を通して確認可能です。
ただし現実問題として、
- どのくらい催告が行われ、どのくらい時効が完成猶予されたか
- 住民票を移さず引っ越しをした場合、知らないうちに裁判などが行われていないか
等を確認することは困難です。

金融機関に対する時効の援用が難しいというのには、このあたりの事情もあるわけですね。
弁護士に依頼し、金融機関から資料を手に入れる…といった方法もあるにはあるのですが、費用面や成功率を考えると、あまり多くの方には勧められません。

「高い確率で時効を援用できそうだけれど、自信がない/不安がある」という場合には、弁護士事務所などに相談しても良さそうです。
催告による時効の完成猶予は何度でも行えるのでしょうか?
結論から言うと、「6ヶ月の期間を空ければ」何度でも行えます。
民法は「催告によって時効の完成が猶予されている間(=6ヶ月間)」のうちに再度なされた催告は、完成猶予の効果を持たないとしています。
逆に言うとこれは、6ヶ月の期間を過ぎたなら、再び催告による時効の延長が可能ということです。
催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。
引用元:民法第百五十条二項

わたしが金融機関で、相手方の債務が「裁判を起こすほど高額でない」なら、とりあえず6ヶ月ごとに催告を連打するかなあ…
住民票を変えずに引っ越せば催告などを無効とし、時効成立を狙えますか?
実はあるんだな 行方不明の人間に「メッセージが届いたことにする」システムが…。
公示送達という手段を使うと、相手方の住所が不明であっても、
- 裁判所や市区町村役場などにメッセージを掲示する
- 掲示から2週間が経過する
ことで、通達が届いたものとみなされます。
この方法による催告で、時効を6ヶ月猶予することは十分可能でしょう。
また相手方が行方不明であっても、訴訟を起こす(そしてそれによって時効を更新する)ことは可能です。

大手金融機関がここまでやるとは思えませんが…。
債権が債権回収会社に譲渡された後なら、可能性もありそうです。
※ちなみに大手金融機関は大体どこも債権回収会社と提携していますし、三井住友銀行グループに至っては自前の債権回収会社 を持っています。
お金を借りたまま海外に高飛びした場合、時効の成立も容易になるのでは?
おすすめできるかはさておき、それはそうかもしれないね……
ただし仮に公示送達が行われていた場合や、相手方不明で裁判が行われていた場合、「国外から帰ってきても時効が成立していなかった」という可能性は否めません。

踏み倒しは刑法違反ではないので、海外にいる間に時効が中断したり、指名手配されたりすることはありません。

ちなみにビザなしでいられる期間を超えて、正規の方法で海外に住むのはけっこう大変だよ…(実体験)
保証人が時効の援用をすることは可能ですか?
時効が成立しているのであれば、保証人のみが時効を援用し、その役割の消滅を主張しても構いません。
相続人が親などの借金の時効を援用することは可能ですか?
はい、可能です。
ただし相続人が複数人いる場合、消滅時効により債務から逃れられるのは、「援用をした相続人」に限られます。(一般に相対効と言います)

相続人全員で債務から逃れるためには、全員の名義で時効を援用する必要があるわけですね。
時効が援用可能となった後、それを知らずに借金の一部返済などを行うとどうなりますか?
消滅時効を主張せず、債務の承認を行ったものとみなされます(時効の利益の放棄)。
ここから消滅時効の成立を狙う場合、再び5年または10年~の日数経過を待たなければなりません。
ただしこの場合も、保証人は単独で時効の消滅の援用が可能です。
借金の時効の援用についてのまとめ

- 借金を含む一般の債権は、
・債権者が権利を行使(取り立て等)できることを知って5年間
・債権者が権利を行使できるときから10年間
で消滅時効にかかる - ただし金融機関を相手にする場合は、
・催告による時効の完成猶予6ヶ月×∞
・債務の承認などによる時効の更新(リセット)
等のため、消滅時効を成立させることは難しい - もし時効が成立しているなら、援用(=時効が成立していますよ!の意思表示)は個人で行える
「最短5年で成立」と聞くと簡単なようですが、実際はそれを妨げる方法も多い債権(借金)の消滅時効。
特殊な事情で援用を狙える場合でない限りは、債務整理などを含む方法を検討した上で、借金と向き合った方が何かと平穏に進みそうです。


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